大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和42年(オ)200号 判決

上告人 坂田はる子(仮名)

被上告人 検事総長 井本台吉

補助参加人 宮本たか(仮名)

主文

原判決を破棄する。

本件を名古屋高等裁判所へ差戻す。

理由

上告代理人岩垣利助名義の上告理由について。

内縁の妻が、内縁関係成立の日から二〇〇日後、解消の日から三〇〇日以内に分娩した子は、民法七七二条の趣旨を類推し、内縁の夫の子と推定すべきであることは、当裁判所の判例とするところである(最高裁判所昭和二九年一月二一日第一小法廷判決、民集八巻一号八七頁参照)。

ところで、原審の確定した事実によれば、

(1)  亡宮本源吉は、亡河村たまと大正一一年初春、残雪未だ去らざる頃、岐阜県○○郡において結婚式を挙げ、事実上の夫婦として、同棲を始めた。

(2)  右両名は、同棲後二、三ヶ月でこれを解消し、たまは実家へ帰つた。

(3)  たまは、同年一二月二二日原告を分娩した。

というのであつて、この事実によれば、上告人は、亡源吉と亡たまの内縁関係成立の日から二〇〇日以後、解消後三〇〇日以内に出生したことが明らかであるから、上告人が源吉の子でないとする特段の事情が認められない限り、上告人は源吉の子であると推定すべきである

しかるに、原審は、かかる推定を覆すに足りる特段の事実を何ら認定することなく、漫然と上告人と源吉の間に親子関係があるとは到底認められないと判示しているのであつて、原判決は民法七七二条の解釈適用を誤り、ひいては審理不尽、理由不備の違法をおかしたものというべく、この違法が原判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、本件については、右の点について、さらに審理をする必要があるから、本件を原審に差戻すのが相当である。

よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 色川幸太郎)

上告理由(編略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例